「8020」をご存知の方は多いと思います。1989年から厚生労働省と日本歯科医師会が、80歳で20本以上の歯を保ち、何でもかんで食べられることを目指して運動してきました。当初、8020達成者は10%程度でしたが、現在では50%を超えるほどになっています。このように歯の本数に主眼を置いた「8020運動」の目標が達成されつつあるなかで、新たに、口の機能の維持・改善に注目して、健康寿命の延伸と要介護状態の先送りを目指す「オーラルフレイル対策」が始まっています。
介護が必要な状態の一歩手前の状態を「フレイル」と呼びます。 「フレイル」のなかでお口の些細な衰えを「オーラルフレイル」といいます。食べこぼしやむせ、固いものが食べ難い、口が乾く、さらには、齢だから固いものは避け柔らかいものにしようなどとという考えかた、などの摂食・嚥下障害がオーラルフレイルに含まれています。これを放っておくと、お口の機能がますます低下するだけでなく、心身全体の「フレイル」につなが、さらに、要介護状態に進行します。
このようなことにならないようにする、または、できるだけ先延ばしにするには、嚥下機能の低下を早期に発見して、早期に対応することが重要です。そこで、仲田歯科医院では、どなたにも身体的な負担をかけず容易に行うことができて、嚥下機能の低下を確実に発見できる聖隷式摂食嚥下機能質問紙を使用して検査を実施しております。この質問紙では、以下のような15の質問に三択で回答をいただきます。
このブログでは、聖隷式摂食嚥下機能質問紙の質問1で問うている「肺炎の既往」と嚥下機能の低下の関係について説明します。
1. 肺炎は死亡原因の5位です
2020年6月5日に公表された「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の結果」によると、死因の順位は昨年と同様,第1位「悪性新生物(腫瘍)」,第2位「心疾患(高血圧性を除く)」,第3位「老衰」,第4位「脳血管疾患」,第5位「肺炎」でした。
2. 高齢者の肺炎のおよそ70% 以上が誤嚥性肺炎です
70歳以上の高齢者の肺炎の多くは 誤嚥性肺炎です。
3. 誤嚥性肺炎は不顕性誤嚥という高齢者には広くみとめられる老化現象が原因です
病気や加齢によって、筋力が衰えたり神経コントロールが鈍ることがあります。加齢で筋力が低下して神経が鈍ると、嚥下反射も低下します。こうなると、誤嚥をしてもむせが生じず、ご本人や周囲の人が気づかないことがあります。これが不顕性誤嚥です。不顕性誤嚥は夜間の睡眠中に起こることもあります。
老化現症で気づかないうちに誤嚥していることがあるので、誤嚥性肺炎を予防するには適切に嚥下機能を検査することが重要です。65歳以上の脳ドックで約半数に症状のない脳梗塞があると報告されています。このような脳梗塞があると誤嚥のリスクが高くなりますから、65歳以上であればいつ不顕性誤嚥をおこしても不思議ではないとも言えます。
4. 誤嚥性肺炎は、咳・痰・発熱・呼吸困難の症状を欠くことがあるので、要注意です!
高齢者でも、青壮年者の肺炎とおなじようにに咳、痰、発熱、呼吸困難が見られます。
高齢患者の 20~30% では、典型的な症状(上記の咳、痰、発熱、呼吸困難)を欠くケースがあるので、次のような症状jにも注意が必要です。
いつもより元気がない
食欲がない
意識障害、突然の興奮、失禁
食事中のむせ込み
食後の声のかすれ
繰り返す微熱
5. 誤嚥性肺炎は予防できます。当院は一人一人にあった適切な予防策をアドバイスしております。
誤嚥性肺炎の予防策には次のようなものがあります。
安全な食事姿勢で食事を摂取とる。
食後 2 時間の寝転ばずに座っている。
口腔ケアを受けて口腔内を清潔にする。
肺炎球菌ワクチンを接種する。
口腔機能検査をうけて、適当な体操やトレーニングのアドバイスを受けましょう。
抗不安薬、睡眠薬などの抗精神病薬には、食事中 の眠気、動作緩慢、誤嚥、むせを引き起こす場合があるので注意が必要です。
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